アクセシビリティとは
アクセシビリティと言えば、障がいのある方や高齢者の方などを対象にした、いわゆる「バリアフリー」として説明される機会が多く、よってそのようにご理解頂いている方も少なくないと思います。
これは間違いではないのですが、厳密には「アクセスしやすい」状態を作ること。
もう少し言葉を補足すると、WEBサイトなどの情報に対し、どのような人も平等にアクセスすることができ、その情報などを享受できること。と言った意味合いです。
ですので、バリアフリーであることは間違いではありませんが、それだけでなく例えば「パソコンでないとアクセスできないWEBサイト」や「パソコンとスマートフォンでは得られる情報に差異が生じること」もアクセスしやすい状況ではありません。
アクセシビリティとは繰り返しますが、「どのような人、あるいは場面でもWEBサイトにアクセスしやすい状況で、且つ情報がきちんと届けられる状況であることと解釈すること」が正しいと思います。
アクセシビリティ対策「基本のき」
では続いて、WEBサイトご担当者の方が押さえておきたい、アクセシビリティ対策の基本4選をご説明します。
- マルチデバイス対応
- 色弱の方向けの対応
- 視覚に障がいがある方向けの対応
- 高齢者などインターネット操作に難がある方向けの対応
制作会社の方や広告代理店の方は、これだけでは不十分でJIS規格の達成基準なども押さえておく必要がありますし、デザインを行う際もWEBセーフカラー等、様々な知識が必要になりますが、ここでは現場のWEBサイトご担当者様向けに焦点を絞ってご説明します。
現場の方に押さえておいていただきたいことには、意外と難しいテクニカルな話もほとんどありませんのでご安心ください。
マルチデバイス対応
複数、様々なデバイス(PCやスマホなどに左右されず)からアクセスできるように対応することです。
本質は「スマートフォン用のキレイなWEBサイトを作る」ではなく、特定のデバイスでは利用できないコンテンツや、また特定のデバイスでは情報に差異があることなどを避けて、デバイスによる情報格差を生じさせないことが大切です。
稀に「最近はスマホユーザの方が多いのだから、予算も少ないからスマホだけきちんと作って、PCは縮小版でも良いよ」等と言った考えも見受けますが、これ自体がアクセシビリティに反しています。ユーザがどのデバイスでアクセスするのも自由です。
「弊社のWEBサイトは○○でアクセスしないと使えないコンテンツや、閲覧できない情報があります」という考え方自体を捨てましょう。
色弱の方向けの対応
有名なものとして「赤と緑の組み合わせ」などがあります。このパターンを全て現場のWEBサイトのご担当者様が覚えて、制作会社に指示を出すのは大変ですので、「色弱の方の場合、デザインに拘り過ぎると困る方もいる」ことを知って、制作会社の担当者に適切な色のアクセシビリティ対策を取るように依頼しましょう。
あと視覚そのものの問題ではなく、モニターなどの都合で「見えづらい」配色もあります。例えば濃淡はあっても、グレー背景に、グレー系で文言を置くなどは読みづらいので避けることが望ましいです。
視覚に障がいがある方向けの対応
こちらの存在は認知が広がりましたが「音声ブラウザ」というものがあり、WEBサイトに記載されている文字を読み上げていきます。
ここで現場のご担当者様が覚えておくべきことは「写真や画像に記載されている文字は全く読み上げることができない」という事実です。
本当に飾りで、その写真があってもなくても情報に差異が生まれないのであれば別ですが、例えば会社までの道順説明で「写真を見れば分かる」というデザインは避けましょう。
その場合は、視覚に障がいがある方も困らないように、音声ブラウザを考慮したデザインや構造を制作会社の担当者に依頼しましょう。
高齢者などインターネット操作に難がある方向けの対応
高齢者に関わらず、インターネット操作に難がある方向けの対応として有名なものは、例えば文字サイズの切り替えなどがあります。
「ブラウザで自由に拡大縮小できるでしょ」という考え方自体がアクセシビリティではありません。
老若男女問わず誰でも操作のしやすいWEBサイトを作ることを心掛けてください。
これは「デザインに拘ってはいけません」という意味ではありません。
リアルな施設でも、オシャレで「今風」のものであっても、きちんとバリアフリーや操作が難しそうなものにはきちんと日本語で「操作説明」がされていますよね?
それと同じことをWEBサイトで実現すれば良いだけです。
日本人向けのWEBサイトなのにオール外国語もアクセシビリティではありませんよね。
障害者差別解消法とウェブアクセシビリティの義務化について
2024年4月1日、改正された障害者差別解消法が施行されます。これに伴い、インターネットで検索していると一部に「アクセシビリティ対応が法的に必要になった」という解釈を出しておられる同業者様もありますが、少し不安を煽るような表現にも感じます。
出典元:内閣府
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」では、具体的にどのレベルのアクセシビリティ対応が必要かが明記されていません。
ただし「合理的な配慮をしなければならない(※)」と一文がある通り、当コラムに記載させていただいた、まずは基本中の基本対策はいずれにしても必要だと感じます。
(※)合理的配慮とは何かも内閣府が発表しています。その中に「具体的にどのようなウェブアクセシビリティが必要か?」は含まれていません。
まとめ
大切なことは、そもそも障がいのある方向けの対応のみがアクセシビリティ対応ではありません。
WEBサイトは本来「WEB標準」という大きな概念があり、ユーザが自由にアクセスし、見た目の調整も自由にできることなどを掲げています。
WEBサイトがあることがステータスだった時代は終わり、インフラのように「あることが当たり前」の時代。
いつ・誰が・どこで・何でアクセスするのかすら分かりません。
「優しい気持ち」でWEBサイトに向き合ってみませんか?それがアクセシビリティ基本中の基本になってきます。