レビット博士の「マーケティング発想法」
まずこのコラムタイトルの「ドリルではなく穴が欲しかった」という格言は、アメリカのセオドア・レビット博士が、1968年に出した「マーケティング発想法」という書籍の中で、次のような話が紹介されています。
ここから、レビット氏による「ドリル理論」として「マーケティング学」で重要な格言となっていきました。
顧客が欲しいものは商品・サービスではない
つまり、このドリル理論で語られているのは、顧客(以降ユーザーとさせて頂きます)が欲しいものは、ドリルではなく、穴を開けたかったということですよね。
当たり前と言えば当たり前すぎますね。実際、ドリルである必要はないわけです。「4分の1インチ」の穴を開けることができれば、ドリルである必要はないわけです。
これは皆様も自分に例えて読んで頂きたいのですが、私は何度かコラムで書いていますが、市民マラソンに取り組んでいます。より速く走れるための「シューズ」が今とても欲しいのです。
ですが、本当に私が欲しいのは「シューズ」ではなく「速さ」。自己ベストを更新したいだけなのです。
速くなるなら、シューズでなくても良いのです。これはオリンピックに出るようなトップアスリートも、私のような普通の市民ランナーも何一つ変わらない本質です。
それを理解していないシューズショップの販売員の方は、単にシューズを売ろうとします。
人それぞれ、「ポテンシャル」が異なります。そのシューズを履いた時、自分自身が速く走れる可能性があるか否かが知りたいのに「プロが履いている」などの売り文句では、ターゲットにしている層には刺さらないと思います。
皆様が欲しいのはWEBサイトですか?
少し私個人の話に偏りましたので、話をビジネスに戻しますが、では皆様はWEBサイトリニューアルを行うとき、WEBサイトが欲しいでしょうか?
きっと違いますよね?恐らくマーケや営業の方であれば受注数、アポイント数、見込リード数などが欲しいはずです。
人事の方であれば、自社に応募してくれる方を増やしたいでしょうし、上場企業のIR担当者の方であれば投資家に自社株を買っていただきたいはずですよね。
それが手に入るなら、WEBサイトでなくてよいですよね?
なぜ私が、WEB制作を行う会社なのに、もっと露骨に「RFPの書き方」や「制作会社の選び方」などのネタをあまり出さないのか?それも答えは先の例えの中にあります。
だって皆様は本当は「RFPの書き方」なんて知りたくもないはずです。面倒くさいですよね(笑)?
そんなことより、自社が「儲かる、得する情報」が欲しいわけですよね?
自社に置き換えてみましょう
ここまで「ランニングシューズ」と「WEBサイト」の話をしましたが、皆様の会社の主サービスはなんでしょうか?
例えばハウスメーカーや不動産の方。私たちユーザーが欲しいのは「家」ではないんですよ。そこでの「各個人にとって幸せな生活」が欲しいわけです。街角にでて「家買ってください!」って、そんなのほとんどの人に振り向かれなくて当然ですよね。
BtoBだって同じです。
私が過去に所属した業界であれば、税理士業界向けの会計ソフトも、税理士や公認会計士の方はソフトでなく、年末調整や確定申告などの業務を効率化させたいわけですよね。
当時は私も理解できていませんでした。今使っておられるソフトから、他社のものに変えれば、余計な業務が増えてしまうわけです。データの移し替えや、操作を覚えるなどです。
これを全て担保した上で、さらに業務が効率化し、コストも下がるのであれば導入して頂ける可能性は増えたでしょう。
例えだせばキリがありませんので、皆様の会社のサービスがユーザに提供できるベネフィットは何なのか、一度言語化してみませんか?
ベネフィットはメリットではない
今、敢えてベネフィットという表現をしてみました。簡単に言えば、利益、得することと言った意味合い。
一方メリットもよく使われますが、こちらは長所・特長といったとこでしょうか。
皆様の会社の商品・サービスには「メリット・デメリット」両方が当然あると思います。それを踏まえた上で利用したユーザーが得られるのがベネフィットです。
ほとんどの場合、このメリットを説明されることが多いのです。例えば、弊社のようなWEB・IT系で例えましょう。
AI関連や、CMSなど多くのサービスで「使いやすい」、「業務負担軽減」といったPRをよく目にされると思います。これらは「メリット」になります。
その「メリット」があるサービスを導入すると、どのような「得」がユーザーにあるのか?
ですね。
業務負担軽減もこれがゴールではないはずですよね。その先には経費削減などが文脈として続くのではないでしょうか。つまり、ユーザーにとってのベネフィットは「業務負担軽減」ではなく「経費削減」になると思います。
といったように突き詰めていくと、皆様の商品・サービスの「ベネフィット」がくっきりと見えてくると思います。