ダークパターンとは
2010年にハリー・ブリヌル氏がまとめた言葉になりますが、簡単に言えばユーザーを騙すようなUI(ユーザーインターフェイス)のことです。
具体的な例を挙げると、例えば解約をしたい際、解約ページへのリンクが見つけにくいものであったり、またたどり着けても何ページも何ページもリンクしていかなければならないサイト。
たまにありますよね。
もう10年以上前、まだX(旧Twitter)が主流でなく、MixiがSNSの絶対王者だった頃、そのライバル的存在だった某SNSも会員退会が難しいと話題だったことを覚えています。
他にも「期間限定」を謳ってはいるものの、いつでも期間限定を行っている会社、これも少なくないですよね。
アメリカやEUでは違法行為
そしてこのダークパターンは、アメリカやEUでは法律によって規制がされています。
(規制されていても、私も比較的最近、海外と知らずにダウンロードしたアプリで、退会に戸惑ったりしたことがあるので、もちろん海外だとダークパターンを行う業者がいないというわけではありませんが。)
日本でも2022年6月に施行された、改正特定商取引法によって規制強化が進みつつあります。
消費者庁のWEBサイトでも、このダークパターンについて注意を呼び掛けています。
ただまだ浸透しているとは言い切れず、騙すは論外ですが、多くの企業(ネクストソリューションズも含め)で悪気もなくこのダークパターンを行っている可能性があるのではないでしょうか?
ではこのダークパターンに当たる行為として7つのことが定義されているので、それを見てみましょう。
ダークパターン7つの分類
ダークパターンに当たるものとして、プリンストン大学とシカゴ大学の研究者がまとめた「7つの分類」が定義されているので、それを紹介します。
- Sneaking(こっそり)
- Urgency(緊急)
- Misdirection(ミスディレクション)
- Social proof(社会的証明)
- Scarcity(希少性)
- Obstruction(障害物)
- Forced Action(強制行動)
それぞれ詳細に見ていきます。
Sneaking(こっそり)
(Dark Patterns at Scale: Findings from a Crawl of 11K Shopping Websitesより)
ここでは3つのことが指摘されており「ユーザーの同意なく、ECサイトのカートに商品・サービスが入ってしまうもの」、次に「購入する直前に、それまでは隠してた費用を示す行為」。
1つ目は明らかに悪意がある行為ですが、2つ目、これ結構やっていませんか?
例えば「5万円から」のように安く見せてなど…。
営業やマーケティングの担当者だけでなく、これはWEBサイトを制作・設計するコンサルタントやディレクター等も要注意ではないでしょうか。
人事の方もこのダークパターンでは現状は対象外といえ、採用の時点で給与を高めに書く。あるいは本当はリモートワークにネガティブな社風なのに、「リモートワーク対応可」などを入れてしまっていることも、本質的には大差がないのではないでしょうか?
そしてこの項目で、もう1つ指摘されていることは、「スポット契約に見せて、または無料お試しと見せて、そのまま定期購入させる行為」。
これも注意しないといけないのが、注釈をつけてはいるけれど、小さい文字で到底読みやすいとは言いずらいもの。
「説明した、読んでいない方が悪い!」というロジックはいかがなものでしょうか?これも、本心は安く見せて、勘違いして買わせたいという心理からきているものですよね。
今一度、こんなことを自社でもやっていないかチェックしてみませんか?
Urgency(緊急)
(Dark Patterns at Scale: Findings from a Crawl of 11K Shopping Websitesより)
タイマーを設置して、本日中に購入を即すようなUIや、いつも実施している期間限定を指摘されています。
これは先のように、金額を騙した…とは少し違いますが、ユーザー心理としては「期間限定」だから申し込んだのであって、もしそうでないなら買わなかった可能性があるわけなので、結果的にはユーザーに不利益を与えているといえるのではないでしょうか?
特に期間限定。インターネットの世界ではないですが、いつも「閉店セール」をやっているリアル店舗など、かなり昔から行われている行為ですよね。
インターネット上でも「今だけ特別」と言ってるだけで、全て通常通り。
なんてサービスも少なくないと思います。特に営業やマーケティング担当者は目先の数字が欲しいからと、安易なこのダークパターン手法に飛びつかないようにしましょう。
Misdirection(ミスディレクション)
(Dark Patterns at Scale: Findings from a Crawl of 11K Shopping Websitesより)
原文は英語の直訳なので、私なりの解釈が入りますが、4つ指摘されています。
1つ目は「断ることをネガティブに感じさせるような言い回し」。
これはたまに見かけると思います。例えば「要らない」という選択肢を与えるのではなく、「今のまま効果が出なくて良い」等と言った文言を使うなどですね。
2つ目は「視覚的に選んで欲しくない選択肢を見づらくさせる」です。これは説明不要かと思うので、3つ目に。
「回りくどい表現で惑わせる」です。例えば会員登録は不要なのに、会員登録してからでないと先のステージに進めないような表現などですね。
ラスト4つ目は「買う直前でアップグレードしませんか?」のような営業手法。これ結構少なくないですよね?
ユーザーは下位ランクのサービスで良いと思っているのに、「上位の方がお得なんですよ?」とECサイトのカートに入れたところで、より高額なものを買わせようとするUIですね。
騙すとは少し違うかもしれませんが、これもダークパターンにあたります。
Social proof(社会的証明)
(Dark Patterns at Scale: Findings from a Crawl of 11K Shopping Websitesより)
これは要するに、実態とかけ離れた人気があるように見せる行為や、誰か分からないレビューが並ぶなどですが、言ってしまえば「サクラ」ですね。
レビューは2023年10月よりステマ規制で厳しくなってきましたが、本質的な「サクラ」は後を断ちませんよね。
あと実態の怪しい「ナンバー1」も本質的には同じかもしれません。シェアナンバー1、売上ナンバー1と言っても、細かい条件下でのナンバー1が市場には溢れているのも事実。
(「ナンバー1」表記について)
本質的に、全サービスがコモディティ化(差別化が難しい)しているので、実態の怪しい「人気がある演出」が横行しているわけですが、これも各社考え物ではないでしょうか。
Scarcity(希少性)
(Dark Patterns at Scale: Findings from a Crawl of 11K Shopping Websitesより)
これは文字通りですが、実際は在庫もたくさんあるのに「売り切れ間近」のような演出を行うことですね。
あともう1つ、先の「人気があるように見せている」にも近いですが、「人気のため早くしないと売り切れます」といったメッセージもこれにあたります。
BtoBでも先着〇名様限定のように謳って、実際はリードを獲得したいだけなので、申込あれば全て対応するなんてケースも実際少なくありませんよね。
「騙してはいない!」と思われるかもですが、人間の真理をついて「残り少ないなら買っておくか…」と本来は買わなかったかもしれない方を「欺いた」ことには違いないわけです。
Obstruction(障害物)
(Dark Patterns at Scale: Findings from a Crawl of 11K Shopping Websitesより)
「キャンセルさせたくない」は誰しもが理解するところですが、メルマガ等同様に「オプトアウト(拒否)」は簡潔に行えるようにしなければなりません。
私も海外系のサービスで、知らない間に入会したことになり(ビジネス系のツールですよ…)、慌てて解約をしようとしたのですが、非常に複雑で、しかもメールのみ。
私は英語が全くできないので、Google翻訳を使って一生懸命に解約にこぎつけました。これ、電話だったら絶望していたところです。
サブスクリプションのサービスを持っている会社は、特にこの場合はカスタマーサクセス部門関係の方が管理されていると思いますが、要注意です。
Forced Action(強制行動)
(Dark Patterns at Scale: Findings from a Crawl of 11K Shopping Websitesより)
これはBtoB企業の多く、弊社もグレーゾーンになるのかもしれません。
消費者庁は「特定の機能にアクセスするために、消費者にユーザー登録や個人情報の開示を強要するなどの強制的な行為。」とあります。
製品情報を見たいだけなのに、必要以上に個人情報を取得する、そしてメルマガ等を送ることとも解釈されているようです。
ウェビナーやホワイトペーパー、その他にも「続きが見たい場合」など。これらは正直、どこまでがやりすぎ。どこまでが正当なビジネスとされるのか専門家の方の解釈を伺ってみたいですよね。
弊社は確かに、ウェビナーを視聴いただくために個人情報を取得し、その後で定期的にメルマガ等で情報提供をさせて頂いていますが、少なくとも「どのような内容のウェビナーか?」は当然自由に閲覧頂けますし、メルマガもオプトアウトはシステムで24時間365日、いつでも簡単に出来るようにはしております。
この製品情報というのが、そもそも「何を売っているのかを見るために会員になれ」という導線であれば流石にやりすぎですね…。
もちろん会員向けに、非会員よりもプラスアルファで情報を提供することは正当なビジネスだと考えますが。
なぜダークパターンは良くないのか
このように、ダークパターンは営業やマーケティングだけでなく、本質的にはカスタマーサクセスや、また顧客とは直接関わらないはずの人事や、IR担当の方だって、また全く営利に関心のなさそうなクリエイティブ関係の方でも「悪気無くやってしまっている」ことがあるのではないでしょうか。
正直、キャンペーン価格でもなんでもないのに、キャンペーンだと言ったり、限定でもなんでもないのに限定など多くやっていることではありますよね。
これを読んで頂いている方も「ウチの会社もやっているなぁ…」と肩身狭くなっておられるかもしれません。
まず何故やってはいけないのかと言えば、「詐欺行為」はそもそも論外ですし、「解約手順が複雑」や「不要なのに高額な方を強要する」などはユーザーに実害を与えていると言えるので、これらはそもそもアウトであることと、さすがに多くの会社ではやっていないと思います。
知らず知らずやっているとすれば「ウソの期間限定」や「実態とかけ離れた人気を演出」等でしょうが、商店街で見かける「いつでも閉店セール」と同じですよね。
「景品表示法」の「不当表示」ではないかという指摘もあるようですが、そもそも違法であるか否かの前に、ユーザーからの信頼を失いますよね。
今後日本でもダークパターンに関する法規制はきっと整備されてくると思いますが、その前に各社、倫理を持って活動をしませんか?
タイトルにつけた通り、これは営業やマーケティング部門だけの問題ではないと考えます。