2023.12.05

ITトレンド

WEBサイトご担当者様が知っておきたい「改正障害者差別解消法」

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いよいよ2023年も、ラスト1か月を切りました。

WEBサイトご担当者様の中には、いわゆる「攻め」の情報。つまり受注や商談につながる情報ですが、こちらは日ごろから情報収集を行っておられる方は多いと思いますが、反対側の「守り」については疎かになっていませんでしょうか?

法律やセキュリティなどですが、これらへの対応は直接の「売上」には影響しなくても、長い目で見た時に、その企業への信頼感、そしてブランディングといったところにもつながっていくので、同じくらいの感度で情報収集を行っておきたいところです。

今回は2024年4月1日に施行される「改正障害者差別解消法」について、一緒に学んでいきましょう。

目次

改正障害者差別解消法とは

内閣府のWEBサイトによると、正しくは「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」という名称で、平成25(2013)年6月に制定され、3年後の平成28(2016)年4月1日に施行された法律です。

これが令和3(2021)年5月に改正され、3年後にあたる令和6(2024)年4月1日から施行されることになります。

令和3年法律第56号」と呼ばれるもので、民間企業向けの重要なメッセージで「事業者による社会的障壁の除去の実施に係る必要かつ合理的な配慮の提供の義務化」として、次のように明記されています。

事業者による社会的障壁(障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの)の除去の実施に係る必要かつ合理的な配慮の提供について、現行の努力義務から義務へと改める。

要するに、課せられている内容に大きな変化はありませんが、これまでは「努力しましょうね!」だったものから「義務」に変更されたわけです。

義務を怠った場合

ではその「義務」を行った場合、どのような罰則などが待っているのか?自社WEBサイトのご担当者様には、広報や経営企画などの管理部門の方も多いと思いますので、特に気にされるところだと思います。

ここについて内閣府が次のように回答しています。

この法律では、民間事業者などによる違反があった場合に、直ちに罰則を課すこととはしていません。

言葉通り、仮に義務を怠っていると判断されても、罰金などが科せられることはないようです。
ただし、次のように補足されているので注意が必要です。

同一の民間事業者によって繰り返し障害のある方の権利利益の侵害に当たるような差別が行われ、自主的な改善が期待できない場合

この場合に対し、民間事業者が行う事業を担当している大臣が、該当する事業者に報告を求めることができることとなっています。これに対し以下のように回答されています。

この求めに対して、虚偽の報告をしたり、報告を怠ったりしたような場合には、罰則(20万円以下の過料)の対象になります

要するに、義務を怠ったことに対しては、現時点では罰則はないものの、事業者の事業を所轄する大臣が「なぜ改善をしないのか」という質問があった際に、それに対して例えば、なにも対応していないのに「対応しています」と虚偽の回答をしたり、あるいは無視をした場合は罰則の対象になるということです。

WEBサイトで必要な対策

WEBサイトで必要な対策は「アクセシビリティ」と呼ばれるものになります。アクセシビリティについては、以前コラムにしていますので、是非こちらもご参照ください

WEBサイトご担当者様の多くが、このアクセシビリティについては何となくイメージは出来ておられると思います。厳密には異なりますが、分かりやすくイメージして頂くために「WEBサイトのバリアフリー化」と考えていただいて間違いではありません。

代表的なものとして、次のようなものがありますので、改めておさらいをしてみましょう。

  • 音声ブラウザ対応
  • 色盲色弱の方への対策
  • 文字サイズを自由に変更できる
  • 誰でも利用できる操作性(例えばキーボードのみでも操作可能等)

これらは代表的なものですし、皆様も概要は他のコラムなどでもご存知の方が多いと思いますので、ここでの解説は割愛します。

要するにこういった措置を、これまでは「各会社は対応するように努力してくださいね」だったものが、「各会社のWEBサイトでは対応しておきなさい」に変わったということです。

古いWEBサイトはリニューアルが必要なのか?

企業によっては、未だに私がWEBデザイナーデビューした2003年頃に主流だった「テーブルレイアウト」と呼ばれる、要するにデザインだけでなく、古い技術のままのWEBサイトを使っておられたり、中にはまだ一世風靡した「Flash」をそのまま使っておられる例も見かけます。

これらの旧技術でWEBサイトを作っている場合、アクセシビリティが著しく低下(そもそもFlashの場合、障がいを持った方だけでなく、健常者の方も利用できません)しており、先の内閣府のメッセージを見る限りでは、「WEBサイトを改善しなさい」となりますが、ここについて総務省から、「総務省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」というものが出されており、その中に次のような内容が記載されています。

合理的配慮の具体例は別紙のとおりである。なお、(1)イで示したとおり、合理的配慮は、具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、掲載した具体例については、(2)で示した過重な負担が存在しないことを前提としている

重要なことは「過重な負担が存在しないことを前提としている」であり、過重な負担として「費用・負担の程度」「財務状況」が明記されています。

この費用の程度については明記されていないので、現実的には企業の規模などが考慮されると思いますが、要するに「事業を圧迫するような費用の負担は必要ない」というように読み取るのが自然でしょう。

つまり、改正障害者差別解消法に向けて、WEBサイトの改善を義務として行う必要があるが、もしそれを行う際に費用面などで負荷がかかるなら、考慮するということだと考えます。
注意:これは筆者の解釈であり、法律専門家の解釈ではありません。

いずれにしてもアクセシビリティは重要

ただ、これだけSDGs等も日常会話に浸透してきた社会において「ウチのWEBサイトは古いままで別に良い。今のクライアントに障がいの方はいないし、特に問題ない」というスタンスでいた場合、罰則を受けることはなくても社会的な信頼は下がってしまう危険性はあるのではないでしょうか?

実際私も色々拝見していると、上場されている企業のWEBサイトでも、「昔の技術で作ったWEBサイト」は稀に見かけます。

何らかの指導などが入った場合、投資家の方の信頼や、また新卒の採用活動を強化されている場合、若い人材に敬遠されるなどの可能性は否定できないと思います。

もちろん、これらは本質的ではなく、本来は障がい、年齢、あるいは健常者であっても例えば、インターネットに接続する環境によって「差別」がない。
つまり、ある一定の条件でないと情報をきちんと受け取れないということは辞めましょう。

というのがアクセシビリティの本質的考えですが、企業活動を行っていく上で、今後これらを無視していくことは決して得策でないことは事実です。

「改正障害者差別解消法でアクセシビリティ対策が義務化されたので、すぐにリニューアルが必要です」という営業があれば、それは何も理解されずに時事ネタで営業アポを取りたいだけの業者なので無視で良いですが、法律とは関係なく、そもそも本質的にアクセシビリティ対策を取っておくことは、これからの時代にWEBサイトを持つ企業としては「当たり前」だという意識は持っておいた方が良いのではないでしょうか。

著者・編集者情報

ネクストソリューションズ (WEB編集部)

単なるWEB制作会社にとどまらず、企業のDXにつながる支援を行うネクストソリューションズWEBサイト編集部です。

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